エステルの自動酸化反応 : ポリオールエステル系潤滑油の酸化劣化反応機構の解明に向けて
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概要
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潤滑油として使用される複雑な構造をしたポリオールエステルのモデル化合物として選ばれた一連のネオペンチルエステルの液相酸化反応が二通りの方法により研究された。まず, 密閉系の反応器中, 高温で自動酸化反応を行い, そこから得られた生成物を詳細に分析することにより酸化反応機構を提案した。次いで, これらのエステルを2種の異なるアルコキシルラジカルと反応させ, その結果から様々な炭素−水素結合のアルコキシルラジカルに対する相対反応性に関する有益な情報を得た。たとえば, アルコキシルラジカルによる水素引き抜き反応はネオペンチルエステルのアルキル基側とアシル基側の両方で即座に起こり, β-アシル位の方がα-アシル位よりも反応性が高いことがわかった。提案したネオペンチルエステルの酸化反応機構を検証するために, エステル由来のペルオキシルラジカルの反応に関して詳細な研究を行い, アルキルペルオキシルラジカルとの比較を行った。エステル由来のペルオキシルラジカルの反応はアルカン由来のペルオキシルラジカルの反応と同様であり, エステルペルオキシルラジカルの反応を解明する際には, アルキルペルオキシルラジカルや関連する酸素含有ラジカルの反応速度係数が適用可能であることがわかった。全般的に, ネオペンチルエステルの自動酸化反応機構は, 現在までにほぼ解明されているアルカンの自動酸化反応機構により説明可能であり, 両方の系におけるペルオキシルラジカルの化学の類似性から予想可能であった。しかしながら, ネオペンチルエステルの自動酸化反応においては, 水素引き抜き反応が起こる部位に対して多大な効果を持つ極性基の影響については考慮が必要である。
- 社団法人石油学会の論文
- 2003-01-01
著者
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長富 悦史
Dept. Of Chemistry University Of York
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Lindsay Smith
Dept. Of Chemistry University Of York
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WADDINGTON David
Dept. of Chemistry, University of York
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Waddington David
Dept. Of Chemistry University Of York
-
Smith John
Dept. of Chemistry, University of York