黒猩々蠅の三亞種間雜種の研究 (II)
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概要
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1) 黒猩々蠅の三亞種特に赤色群 (texana, americana) と灰色群 (virilis) との雜種の X 染色體上の重複逆位の範圍並に因子間の交叉に及ぼす影響及び不分離に對する影響が見ら れた。2) 三亞種間特に兩群の間には強力な生理的隔離が存在することは交雜の困難の程度によ つて明かであるが, 交雜によつて生殖能力のある雌雄を得ることが出來その F6 までの雜種 雄の生活力, 授精力について知ることが出來た。3) 雜種雄の授精力はその有する Y 染色體が灰色群のものか赤色群のものかによつて大 いに差があり前者に於ては又その有する X 染色體が灰色群のものか赤色群のものかによつ て授精力に優劣あり, 後者に於ては X 染色體が何れの群に屬するものでもすべて授精力は 低い。即雜種雄の授精力は Y- 常染色體の平衡關係と同時に X- Y の平衡關係によるもの と考えられる。4) 雜種特に雄の生活力 (Vitality) 及び授精力 (Insemination ability) はその有する 遺傳的な構成によつて決定せられるものであつて, その體の表現型によつて決定せられるも のでないことは雄の競爭交配によつて明かにされた。5) 黒猩々蠅の雜種も Haldane の法則中に含まれるが明瞭な適用例とならない。その理 由は三亞種の類縁關係の非常に近いことを表すものと考えられる。即赤色群は灰色群の不安 定な突然變異體であると考えられる。
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