携帯型装置による果樹葉の光合成及び蒸散速度の測定
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概要
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ADC社製携帯型光合成・蒸散測定装置(広葉用)を用いて,圃場条件下でリンゴ,ニホンナシ,モモおよびブドウの葉の純光合成速度(Pn),蒸散速度(E)及び気孔拡散伝達度(gs)を測定した。1 各果樹葉とも,同化箱へ送る空気の流速が350ml min-1のとき,Pnが最高であった。2 Pnの光飽和点は,リンゴ「ふじ」は約1,100μE m-2 s-1(約60klux),ニホンナシ「幸水」は約1,200μE m-1 s-1(約65klux),モモ「大久保」は約1,000μE m-2 s-1(約55klux)そしてブドウ「巨峰」は約900μE m-2 s-1(約50klux)であった。光飽和点におけるPnは,「ふじ」及び「幸水」は約15μmol m-2 s-1(約24mg dm-2 hr-1),「大久保」は約13μmol m-2 s-1(約21mg dm-2 hr-1)そして「巨峰」は約9μmol m-2 s-1(約14mg dm-2 hr-1)であった。「巨峰」のPnが低かったのは,葉齢が進んでいたことと土壌の乾燥が原因ではないかと思われた。Pnの光補償点は,「ふじ」は約10μEm-2s-1(約550lux),「幸水」は約30μEm-2s-1(約1,600lux),「大久保」は約50μEm-2s-1(約2,700lux)そして「巨峰」は約20μEm-2s-1(約1,100lux)であった。gsは,約500μEm-2s-1(約27klux)以上の光量下でほぼ一定で,それ以下の光量ではやや低下した。3 日変化を測定した結果,Pnは,各果樹葉とも,夏の高温日には,8:00~9:00に顕著な山を形成し,やや気温の低い初秋には,9:00~12:00に緩やかな山を形成した。Eは,各果樹葉とも,夏には10:00~12:00に山を形成し,初秋には10:00~14:00に緩やかな山を形成した。gsは,各果樹葉とも,早朝が高くて時刻とともに低下し,その低下度は夏の方が初秋よりも著しかった。4 季節的変化を測定した結果,Pnは,各果樹葉とも,生長中の幼葉は低く,生長が完了し,それに次いで葉緑素含量が最高になる時期に最高値に達した。リンゴ,ニホンナシ及びモモのPnは,7~9月は高水準を維持し,その後モモは10月上旬から,ニホンナシは10月中旬から,そしてリンゴは10月下旬から急低下した。ブドウのPnは,8月から徐々に低下した。晩秋期にPnが急低下する時期は,葉の葉緑素含量が急低下する時期より早かった。E及びgsも,Pnにほぼ似た季節的変化を示した。
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