南木曽地方における後濃飛花崗岩類の風化とその物理的性質について
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概要
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南木曽地方に分布する花崗岩類は,4種の後濃飛花崗岩類である。昭和34年9月この地方を襲った伊勢湾台風は,大量の風倒木を生じさせ,この根倒れによってその後極度に崩壊地が発生した。この崩壊地は,その後も度重なる集中豪雨により拡大したり新たな崩壊地が発生し,その分布は,地質的に偏在する傾向となった。これらの崩壊地は,崩壊の形態が類似していて,薄い表層の滑落である。この特徴は,花崗岩類を基盤とする地域に普遍的にみられるものであって,これらの基盤岩類の風化と深い関係を持つものと考えている。そこで,この崩壊地にみられる花崗岩類に共通する風化断面を新鮮な基盤から風化の進行方向にI帯,II帯,III帯と3つに分帯することができた。この3つの分帯は,この地域のどの花崗岩にもよく一致している。ところが,この地域の崩壊地の表面に現れる風化帯は,岩種によって相違している。理論的には,風化帯がII,III帯であれば,崩壊率は高率となるはずである。しかし,本調査地域では,必ずしも一致しない。この風化帯において,節理によって分断されたブロックが風化していく過程で,風化殻が観察される。この風化殻もまた新鮮な部分も含めて4つに分帯することができる。これもまたどの岩体にもよく一致している。この風化分帯も風化の進行方向にA帯,B帯,C帯,D帯として,固結度の高いA,B,C帯について,風化の程度を理論的に意味のある物理量で定量化した。岩種別風化分帯別の物理量間には,岩石の構成粒子の類似している岩種のグループについて,それぞれ高い相関が得られた。また,風化分帯の間には,物理量において顕著な相違もみられた。これらの物理量のうち,崩壊現象に最も近接するマサの定量化ができなかったが,C帯は,風化帯の中でも最も崩壊面に近く,この性質では,崩壊率との関係が顕著に現われなかった。しかし,中粒の花崗岩類と粗粒の花崗岩類でかなり物理量に相違がみられ,散布図においても,回帰直線が下位であれば,それらのグループが分布する地帯は,崩壊率が高い傾向がみられる。その顕著な例が上松花崗岩であり,摺古木花崗岩では,高度があって,地形の影響が大きいと考えられる。このような,岩石の物理量と崩壊率の関係は,特に崩壊率の測定において,広い面積が必要であり,領家帯の花崗岩類全てについての資料があれば,実証が可能であると考える。また,風化帯の物理量が崩壊地復旧の治山計画と崩壊機構の解明に指針となり得るだろうと考える。
- 信州大学農学部の論文
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