南方海域のカツオ漁場と漁獲物について
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概要
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南方海域(24°N以南)におけるカツオ竿釣船の操業記録(1963年5月~'66年4月)を検討した結果,この海域の漁場と漁獲物に関して次の知見を得た。1 この海域の漁場は列島線沿いに形成される瀬の漁場と,143°E以西の外洋に形成される灘の漁場の2つに大別される。漁場の月々の推移を見ると,初漁期の5月・6月頃は主として20°N以北の瀬が中心になるが,その後次第に南へ移って瀬の漁期の終る10月又は11月にはサイパン島周辺やパガン西の瀬附近に集中する。11月又は12月頃から漁場は灘に移行,当初は瀬の直ぐ西側の15°N,140°E附近に形成されているが,その後範囲を拡大させながら南西の方向に移動する。一方12月又は1月頃10°N,135°E附近に別の魚群によるものと見られる新たな漁場が出現し,漁場の重心は南北にそれぞれ1つづつ形成される形となる。その後北の漁場は南下し,南の漁場は東進して3月頃12°N,140°E附近で1つに合体,ここに多数の漁船が集中してこの海域におけるカツオ漁の最盛期を迎えることになる。2 各漁船の操業記録から漁場水温の旬別平均値を求め,漁獲量や漁場の時期的推移と関連させてその変化を見た。瀬では表面水温が26℃以上に昇ることが好漁場形成のための条件の1つになるようである。9月以降漁場水温は次第に低下するが,その低下の過程と漁場の南下及び瀬から灘への移り変りの過程が時期的には略々一致している。3 個々の漁船の操業記録から1日1竿当り漁獲量平均値を月別に求めてその動きを見ると,どの年度も概ね共通した傾向を示している。即ち瀬の漁期の始まった直後の5月又は6月には270kg前後の大きな値になっているが,その後急減して瀬の漁期の終る10月又は11月には110~140kgという漁期始めの1/2以上の値となっている。漁場が灘に移った直後はやや増加するが1月に再び減少,2月になって急増している。以下の動きは個々の漁船の1竿当り漁獲量度数分布の変化にも対応しており,この水域全般の魚群密度の季節的消長を表わしていると見てよい。この結果と後述の体長組成の月々の変化とを併せ考えると,瀬の魚群は漁期間中他水域からの補給が殆んどなく,漁獲や漁場からの逸散によって次第に減耗してゆくとの推定が成り立つ。4 漁獲物の体長組成を見ると,瀬の漁場では2才又は3才の若年魚が,又灘の漁場では4才以上の高年魚がそれぞれ主体となっている。瀬での主群である2才群又は3才群の月々のモードは漁期の経過に伴って規則正しく大きい方に移行する傾向が見られるが,これは漁期間を通して同一の魚群が生長しつつ漁獲対象になっていることを表わすと考える。灘では主群である4才群の月々のモードの位置が不規則に変化したり,或いは逆に小型化したりしており,ここでは瀬の場合と違って主群を構成している魚群が次々と交替していると見てよさそうである。又体長組成に現われる主群の消長には日本近海の場合と共通した動きが認められる。
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