牧乾草の給与が黒毛和種去勢牛の産肉性,枝肉成績および肉質におよぼす影響
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概要
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日本の食料自給率は先進国の中でも最低レベルであり,その向上のためにも飼料自給率の向上が期待されている。飼料自給率向上のためには自給粗飼料の活用が有効であるが,日本の肉用牛の大部分は舎飼で輸入濃厚飼料多給による飼養形態が一般的である。こうした背景の中,舎飼で肉用牛へ牧乾草などの粗飼料を多給した時の肥育・枝肉成績および産肉性について検討された報告は少ない。本研究では,舎飼での牧乾草多給が黒毛和種去勢牛のと体成分および肉質におよぼす影響について明らかにした。試験区はと畜前1年間,大田研究拠点産の牧乾草を飽食かつ濃厚飼料(2㎏/day)を制限給与した粗飼料区ならびに肥育全期間,濃厚飼料飽食で牧乾草(1。5㎏/day)を給与した濃厚飼料区を設定し,黒毛和種去勢牛(各区6頭)を舎飼で供試した。28ヵ月齢でと畜後,枝肉成績の測定,半腱様筋および腰最長筋を採取し,栄養成分,ドリップロス,せん断力価およびクッキングロスを分析した。1。試験終了時体重,可消化養分総量(TDN)の摂取量および枝肉重量が濃厚飼料区と比較して粗飼料区で有意に少なかった。また,ロース芯面積も濃厚飼料区に対して粗飼料区で有意に小さかった。一方で歩留基準値は試験区間で差は認められなかった。2。蛋白質含量は濃厚飼料区に対し粗飼料区の半腱様筋で有意な増加が認められた。また,筋肉内脂肪含量は濃厚飼料区で増加傾向が認められたが,試験区間で有意差は認められなかった。筋肉内脂肪酸組成について,濃厚飼料区の腰最長筋で1価不飽和脂肪酸含量の有意な増加が認められたが,飽和脂肪酸及び多価不飽和脂肪酸含量はいずれの筋肉においても有意差は認められなかった。n-3系多価不飽和脂肪酸は濃厚飼料区と比較して粗飼料区で増加または検出された。3。熟成後のドリップロスは濃厚飼料区に対し,粗飼料区の半腱様筋で有意な減少が認められ,さらに,熟成後のクッキングロスは粗飼料区の半腱様筋で減少傾向が認められた。せん断力価について,熟成前では粗飼料区の半腱様筋で有意に高くなったが,熟成後の両筋肉では試験区間で有意差は認められなかった。
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