近世庶民教育における徳育の構造 : 大坂の寺子屋師匠と往来物を手掛かりに
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概要
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研究ノート(Note)近世の大坂は巨大な商業都市であり、全国的にみても、当時の庶民教育は実用を重んじ、職業と生活の実際に役立てようとする傾向が強いといわれるが、詳細をみてゆくと、そのような世俗的性格だけでなく、あわせて徳育も重視されている。大坂における寺子屋師匠没後の墓碑・顕彰碑には、様々な角度からなる、世間離れした点への人物評が寄せられ、学者、文人、書家たちとの知的で風雅な交友関係も推測される。また大坂版の往来物を全体的に捉えると、そこには一定の世界観がそなわり、さまざまな場面において、教育する側の配慮に根ざした聖性・道徳性、すなわち心の教育や内面形成の尊重と、世俗性との均衡が保たれていた。聖性・道徳性と世俗性の対立が厳しく、否定し合うのではなく、聖性・道徳性からの働きかけのもとで、両者の緩やかな共存が成立しているところに、近世庶民教育における徳育の構造的な特徴を見いだすことができよう。
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