非アルコール性脂肪肝に対するプロバイオティクスによる栄養療法
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概要
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近年,腸内細菌(microbiome)の網羅的解析やそれらの代謝産物の研究を背景に,腸内細菌が生体の生理機能や病的変化に関与していることが明らかになってきた.その解剖学的位置関係から,腸管疾患と腸内細菌叢との関連は以前より研究されており,これらをもとにして,プロバイオティクスという概念が,腸内細菌を適正化する目的で栄養療法として臨床応用されてきた.プロバイオティクスとは,腸管微生物叢を調整して人体に有益な作用を与える生きた微生物,またはそれらを含む食品のことをいう.さらにプレバイオティクスというという概念(消化管上部で分解・吸収されず,大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となりそれらの増殖を促進して,大腸の腸内微生物叢の構成を健康的なバランスに改善し維持する,宿主の健康を増進する食品成分)も提唱されている.プロバイオティクスは,腸内細菌叢の多様性や組成に与える影響はさほどではなくとも,細菌の遺伝子発現や代謝機能に大きな影響を及ぼすことが,マウスの実験で示されている.前述のように,腸管でのプロバイオティクスの働きは,胃腸疾患に対する効果とともに研究が進んできており,腸管・腸上皮細胞に対する作用メカニズムについては総説に詳しいが,最近では,腸内細菌叢の混乱が消化管に留まらず,代謝や神経,循環器系など幅広い生体機能に影響しており,疾患の発生や進展に関与する可能性が認識されつつある.我々は,非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver disease ; NAFLD)の治療として,栄養学的アプローチについて総説を上梓し,プロバイオティクスについても言及してきた.本稿では,プロバイオティクスのNAFLDに対する知見,効果等を整理し,今後の展望,問題点について考えてみたい.
- 福岡医学会の論文
- 2014-02-25
福岡医学会 | 論文
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