賑給の実態をめぐる二、三の問題 : 義倉による賑給の対象を中心に
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概要
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古代における困窮者の救済制度として義倉の存在はよくしられているが、運用の実態などについては史料的制約もあって詳細は不明である。木簡や漆紙文書など、発掘による文字史料に期待されるが、賑給との関連で議論されることは殆どない。最近、平城京左京八条一坊六坪(第一六〇次調査)より発見された漆紙文書の中に、救済の対象とも考えられる人名のリストが存在することをしり、それが正倉院文書として残る天平年間の大税賑給歴名帳かとされる七片の断簡の内容と形式が類似することに注目し、義倉帳に賑給の対象者としてわずかに残る「小子」・「小女」・「正女」との関係を吟味することから、二つの史料が義倉制度にかかわる賑給の対象者のリストである可能性が高いこと論じた。また、子供や女性がとくに義倉による賑給の対象とされている理由を大税(正税)による賑給の実態と比較しながら検討した。その過程で、天平六年頃より義倉制度の粟を中心とした形式的規定が稲穀や穎稲を中心とした現実的な方式に修正されることから、義倉による賑給を粟に限定して考える必要のないことを指摘した。
- 大手前大学・大手前短期大学の論文