タマネギ灰色腐敗病の病態解剖学的観察
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概要
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1. B. alliiによるタマネギりん茎の腐敗の症状は首腐れ,肌腐れ,尻腐れ,心腐れに分けられる。2.菌の侵入は傷口からは容易であるが,健全表皮からは,小菌糸塊を形成し,菌糸の集団で侵入する。侵入した菌糸は細胞膜間,細胞間げき,および細胞膜を貫通して,組織内を縦横に走る。内側のりん片に侵入する場合は,外側のりん片から続いて菌糸束で侵入するか,一度菌糸塊を形成してから侵入してゆく。3.菌が侵入した部分の細胞膜のペクチン質は分解消失しているが,セルローズはほとんど影響を受けていない。菌糸の周辺の死細胞膜でも,ペクチン質の分解が認められる。4.菌糸の存在する周辺部の組織は致死部,中毒部および健全部に分けられる。致死部の後方には菌が存在している。致死部の先の中毒部には,細胞の死に至る種々の過程の細胞が存在する。5.細胞の変性は原形質糸のみだれから始まる。原形質が細胞膜に接して,または核の周囲に一部分集合を始める。そして液胞の収縮,分裂があらわれ,原形質流動は停止する。やがて液胞が消失し,原形質が凝固し死に至る。貯蔵初期,あるいは内部の新鮮なりん片では,原形質糸のみだれと液胞収縮から,原形質が細胞内に一様に分散し凝固して死に至ることが多く,菌による細胞変性に抵抗的である。6.生細胞は塩基性色素で染色され,原形質凝固を始めた細胞は塩基性,酸性両色素に染色された。原形質凝固以前の中毒細胞の核は好酸性を示し,凝固すると好塩基性を示し核の変性が明らかである。7.中毒細胞の限界原形質分離濃度は0.37M,健全細胞は0.38Mで,中毒細胞はやや原形質濃度が低下している。8.健全組織のpHは6.4~6.6の微酸性であるが,中毒部はpH4.8,致死部はpH4.0とかなり酸性である。9.罹病軟化した組織からの抽出液には毒性物質が存在し,それは熱に対して不安定である。
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