Brevibacterium linensの揮発性物質生成に関する一般性状
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概要
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B. linensの生産する風味物質およびその一般的性状を知る目的から,本報では,培養過程の性状あるいは揮発性物質の生産性について種々検討を行った。すなわち,揮発性物質としては,酸性,塩基性および中性物質を対照とし,培地のpH,組成と菌の発育およびそれらの生産性を比較検討し,さらに,その組成について定量的にあるいは定性的に分析した。結果は次のごとく要約される。1 B. linensは培地pH4~5付近ではほとんどその発育が認められない。しかし,それ以上のpHでは発育し,pH7付近で最も顕著である。7日間の培養で培地のfinal pHは主に8.5付近に変化するが,培地のinitial pH9~10の強アルカリの場合,むしろ酸性側に変化しfinal pHを示した。NH3-Nの生産性は菌の発育の顕著なpH6.0~7.5で最も大である。なお,培養過程のpHおよびNH3-Nの生産性の変化は単純なシグモイド曲線を示さなかった。2 揮発性塩基性物質は他の酸性および中性物質と比較して,その生産量が多く,B. linensの特有の風味を構成する主成分と考えられる。一方,酸性および中性物質の生産も決して少なくない。なお,塩基性および酸性物質の生産は培地pH7付近で最も大であり,また,培養の経過に伴うその生産性は複雑で,培養後5,9,11日付近にそれぞれ含量のピークを示した。3 揮発性酸は培地のグルコース,肉エキス,ペプトンの含量が多くなるにしたがってその生産が増加する傾向を示し,また,食塩5%の濃度で最も大であった。その組成は酢酸,i-吉草酸,カプロン酸が多く,ことにi-吉草酸の多量生産性は文献未知の新事実である。4 揮発性塩基は培地の肉エキス,ペプトン含量の増加で顕著に多くなり,また食塩濃度3%の時,最も多い生産量を示した。しかしグルコースの存在はむしろその生産を減少させる傾向を与える。その中のアミン類として,ヒスタミン,エチルアミン,チラミン,ジプチルアミン,カタベリン,メチルアミン,ジエチルアミンなどを検出した。5 揮発性中性物質として,フォルムアルデヒド,アセトン,アセトアルデヒド,エタノール,i-プロパノール,n-プロパノール,およびi-ブタノールなどを検出した。すなわち,三種のカルボニル化合物と四種のアルコールを認めた。これらの物質の生産においても培地の各成分濃度の影響が大であり,特に肉エキス,ペプトンの濃度差がアセトアルデヒド,アセトンの生産に影響するところ大であった。
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