低ガンマグロブリン血症を伴う悪性胸腺腫に大量の心膜液貯留および全身性巨細胞封入体ウイルス感染症を合併した1例
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概要
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症例は65才,女性.慢性気管支炎・気管支拡張症・低ガンマグロブリン血症の診断にて, 64才より某院にて治療を受けていたが,両下肢,顔面の浮腫が出現したため,当科に入院した.入院時,著明な心拡大が認められ,心膜穿刺により約700mlの血性心膜液が得られた. CTスキャンでは,心膜腔内への侵入を伴う直径10cm以上の腫瘍を前縦隔に認め,生検組織像および浸潤性より悪性胸腺腫と診断した.悪性胸腺腫に伴つて大量の心膜液貯留が認められた例は,これまで数例しか報告されておらず,まれなものと考えられた.免疫学的検索では,膜表面に免疫グロブリンを有するB cellの著減と同時に, suppressor T cellの増加およびリンパ球幼若化試験における細胞性免疫能の低下が認められた.また,患者血清内のthymopoietin 5活性の上昇が認められ,このような体液性因子により誘発された免疫異常の可能性も示唆された. 60Co照射により,腫瘍は著明に縮小したが,低ガンマグロブリン血症は改善されず,全身性巨細胞封入体ウイルス感染症を併発して死亡した.このように,低ガンマグロブリン血症を伴つた胸腺腫例で巨細胞封入体ウイルス感染症が明らかになつた症例は,これまで5例の報告しかなく,極めてまれである.低ガンマグロブリン血症を伴つた胸腺腫例において,本例でも認められたごとく細胞性免疫能の異常が指摘されており,今後,注意を要すると考えられた.
- 日本内科学会 = The Japanese Society of Internal Medicineの論文
日本内科学会 = The Japanese Society of Internal Medicine | 論文
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