蚕の不良栄養条件と作柄
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
蚕の飼育条件とくに栄養条件と作柄の関係を追究するため,主として支124号×日124号と2・4交雑原種を用い,飼料価値が著しく劣る桑葉や異常な食桑不足を起こさせるような飼育取り扱いなどによって不良栄養条件が蚕の作柄に及ぼす影響について各種の試験を行い概要つぎの結果を得た.1.1齢期をはなはだしいカリ欠桑葉で飼育したところ1齢中の発育が著しくおくれたが,2齢以後は回復して蚕の生存率には異状が認められなかった.2.1-2齢期を給与桑がはなはだしくおれる無蓋育でしかも少ない給桑回数で飼育しても発育経過時間や体重が延長または軽減し,時として繭も軽くなったが,蚕の生存率にはほとんど影響が現われなかった.3.1-5齢を通じて早期停食の飼育取り扱いをしても,就眠・脱皮した蚕の生存率にはほとんど異常が認められなかった.4.拓葉で蚕を飼育した場合,交雑種ではいかなる齢期をこれで飼育しても発育経過時間,体重および繭の計量形質には延長または軽減の影響が現われるが,生存率にはなんらの影響も現われず,2・4交雑原種では1-3齢を拓葉で飼育すると死亡率もやや高くなり,4,5齢とくに5齢期を拓葉で飼育すると死亡率が著しく高まり,全滅にひんし,拓葉に対する蚕の食性が蚕品種および齢期により著しく異なることが認められた.5.横臥枝矮小枝葉で梅雨期に蚕を飼育した場合,交雑種および原種ともにいかなる齢期をこれで飼育しても発育経過時間,体重および繭の計量形質には延長または軽減の著しい影響が現われるが,蚕の生存率にはほとんど影響が現われず,まれに4-5齢をこれで飼育した場合に死亡率がやや高くなった.6.慣行の条桑伐採収穫法よりはるかに多く同一桑株から伐採収穫し,樹勢の衰えが明らかに認められ,飼料価値も低下した桑葉で4-5齢期を飼育したところ発育経過時間が著しく延長しただけで蚕の生存率には影響が現われなかった.7.交雑種の1-2齢期を極端な密閉飼育を行い,蚕座上面のCO2濃度が1齢で約8%,2齢で10%以上に達したが,発育が不斉で経過時間が長く,体重が著しく軽く,繭がやや軽くなっただけで蚕の生存率には異常がなかった.異常の結果に基づき栄養条件とくに葉質と蚕の作柄および飼育技術のあり方について考察を加えた.
- 農林省蠶絲試驗場の論文
- 1966-07-00