織物の剪断変形について
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概要
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1.試作した剪断変形測定装置は,織物に剪断力を加え,これにともなう変形量の測定に適用することができる.2.これによって剪断力と変形量との関係をα-f曲線に画いて,これから各種織物の剪断変形過程を解析することができる.3.織物の剪断変形は,構成する糸が屈曲することと,タテ糸とヨコ糸の交角が変化することによって生じ,剪断力を除去すると糸の屈曲や圧縮による変形は復元しやすいが,交角の変化による変形は復元しがたい.4.この装置を用いて,4種類の絹織物,原料繭および製糸法を異にする生糸を用いた同一規格の絹織物,ならびに13種類の組織の異なる生織物について,剪断変形を測定した.5.4種類の絹織物については,羽二重・綾絹は剪断変形を起しやすく,朱子・タフタの順に起しがたくなり,朱子は変形量の大きさの割合に復元量が少ない.これらの変形量の多少は,試料を握った場合の柔らかさや硬さなどの触感とよく一致する.6.原料繭および製糸法を異にする生糸を用いて同一規格・同一条件で製織した絹織物についてα-f曲線を画き,FRLドレープ係数・曲げ硬さと対比させ,これらとも密接な関連があることも認められた.同種織物間の比較においては,糸の屈撓性は織物の剪断変形に影響を与えることがわかった.7.13種類の組織の異なる生織物について,タテ・ヨコ糸交錯回数との関係を調査した結果,タテ糸交錯回数が多くなると,剪断変形を起しがたくなることが明らかになった.また,剪断変形の難易や,坐屈角度の大小は,組織に原因する糸と糸との間隔の広狭とも関係することも判明した.ただし,ヨコ糸交錯回数との関係はうすい.
- 農林省蠶絲試驗場の論文
- 1963-10-00