自己組織化マップを利用した富栄養化貯水池の季節的な水質変動特性の定量的評価
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概要
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本研究では,農業農村地域の富栄養化が進行する地域水資源の保全と改善に資するための水環境解析手法を提案した。すなわち,水環境調査で得られる多様かつ経時的な情報から,藻類の季節的消長も含めた水質の変動特性を定量的に評価することを目的としたデータ解析である。藻類綱別Chl。aを含めた富栄養化に関わる水質項目の定期観測結果をもとに自己組織化マップ(SOM)を利用したデータのクラスタリングに着目することで水環境の特徴抽出を試みた。対象水域は,低平農地域に位置する二つの農業用貯水池であり,水深,貯留量,植生などの水域特性が異なる富栄養化水域である。SOMを利用したクラスタリングにより,水温,TOC,TN,TP,緑藻類Chl。a,藍藻類Chl。aから構成される定期観測結果のデータは複数のクラスタに分類された。各クラスタの特徴は,それを構成する観測結果の平均値によって表され,とくに水温と緑藻類Chl。aが水質環境の特徴抽出において重要な要素であった。また,クラスタの経時的な推移パターンによって各貯水池の水環境の季節的な変動特性,および二つの対象池の水質特性に関する相違点を容易に見出すことができた。以上のように,SOMを利用したデータのクラスタリングは,詳細な定期観測結果に基づく水環境の現状評価に対して有効なツールであることが示された。今後の課題として,クラスタの推移の要因を探るために,気温や日射量などの気象的要因を考慮に入れた解析が挙げられる。
- 九州大学大学院農学研究院の論文
- 2012-02-00
九州大学大学院農学研究院 | 論文
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