アップウェリング飼育と砂床飼育によるアサリ稚貝の生残率,成長および粗成長効率の比較
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概要
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1)アップウェリング飼育における基質(砂)の無い状態が,アサリ稚貝の生残率,成長および粗成長効率に及ぼす影響を検討するため,人工的に育成したアサリ稚貝をアップウェリング方式で飼育した結果と,併せて並行して実施した砂床飼育の結果と比較した。2)生残率,成長については有意な差が認められなかったが,稚貝1個体当たりの総摂餌量はアップウェリング飼育のほうが多かった。3)粗成長効率は,稚貝1個体における軟体部乾燥重量および軟体部に含まれる炭素量,窒素量,リンについて算出したところ,いずれもアップウェリング飼育のほうが有意に低かった。4)アップウェリング飼育のほうが砂床飼育より摂餌量が多く,粗成長効率が低い要因は,砂床飼育では,稚貝は潜砂して定位状態にあるが,アップウェリング飼育では,稚貝は水流により動かされることから,非定位状態になり,砂床飼育よりもエネルギーを消費することにあると推察される。5)アップウェリング飼育は,砂床飼育と異なり,椎貝を積み重ねて飼育することが可能であることから,砂床飼育よりも高生産を期待できる。したがって,餌料を有効に活用しつつ,粗成長効率を向上させ,生産性の高いアサリ稚貝飼育を実現するためには,稚貝収容個数,通水量,餌料密度等の飼育条件を比較して,適正な条件を明らかにしていくことが重要となろう。
- 2011-03-00
著者
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小林 豊
千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所
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鳥羽 光晴
Tokyo Bay Fisheries Laboratory Chiba Prefectural Fisheries Research Center
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鳥羽 光晴
千葉水総研セ東京湾漁業研究所
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狩野 泰則
東京大学大気海洋研究所生態系動態部門
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