線形相補性問題による国際林産物貿易モデルの再構築
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概要
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世界的に最も利用されている国際林産物貿易モデルとして,Buongiorno et al. [2J によるGlobal Forest Products Model (GFPM)が挙げられる1)。GFPMは,世界180ヵ国,林産物14品目を網羅しており,世界食糧機関(FAO[4])による世界の林産物需給の長期予測や米国通商代表部(USTR[15])による林産物部門の貿易自由化の影響予測に利用されている。しかし,GFPMは,いくつかの間題点を含んでいる。まず,GFPMは,Takayama and Judge [13]に等しく,2次計画問題として定式化された伝統的な空間均衡モデルであるため,積分可能性の問題integrability problem) を内包し,林産物の関税政策として一般的な従価税を直接取り扱うことができない。次に,現実の貿易構造を再現し,かつ貿易構造の大きな変化を抑制する効果をもつ貿易慣性 (trade inertia) が導入されているものの,貿易慣性を導入する経済的な根拠は乏しい。また,貿易慣性は,貿易量の上限および下限の制約であるため,関税自由化等の貿易政策の変更に伴う貿易量の変化を適切に捉えることができないという問題も含む。そこで,本稿では,前田・狩野 [9] で展開された内外価格差を含む空間均衡モデルを応用し,複数財モデルへ拡張することで, GFPMの上記の問題を克服しうる国際林産物貿易モデルの構築を試みる2)。そして,現実の貿易構造の再現性(以下,再現牲)の観点から,モデルの有効性を示す3)。本稿の以下の構成は次の通りである。第2節において,国際林産物貿易モデルとして空間均衡モデルを展開し,第3節において,空間均衡解の存在証明を行う。さらに,第4節において,本稿で利用するデータについて言及し,第5節において,関税および輸送費以外の内外価格差要因に起因する内外価格差を推計するために,前田・狩野 [9] の方法に従ってキャリプレーションを行い,その推計結果を示した後,再現性の程度に関する検証を行う。最後に,第6節において本稿をまとめる。
著者
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