琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(1)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
琉球在来豚アグー(アグー)精子に適した凍結保存技術を確立するため,アグーおよびランドレースの射出精液を供試して,以下の2つの試験を行った。試験1は凍結処理前の室温放置時に用いる精子処理液の違いが,凍結・融解後の精子性状に及ぼす影響について検討した。精子処理液は,精漿液(SP),モデナ液(Modena),Beltsville thawing solution(BTS),D-Glucose-PBS(D-PBS)およびCa-and Mg-free Tyrode solution(mTyrode)の5種類の溶液で比較した。試験2は凍結処理前の室温放置時間の違いが,凍結・融解後の精子性状へ及ぼす影響について検討した。室温放置時間は,室温放置なし(0時間),1および2時間の3区分で比較した。各試験の結果は以下のとおりであった。1.アグー精子はBTSを用いて室温放置した場合に,運動精子率(Motile),前進運動精子率(Progressive),精子細胞膜正常率およびアクロシン活性が他の精子処理液に比べ高い値であった。2. ランドレース精子はModena使用して室温放置した場合に,Motile,融解後60分のProgressiveが他の精子処理液に比べ有意(Pく0.05)に高かった。しかし,精子細胞膜正常率,アクロシン活性は精子処理液間にほとんど差はなく,各精子性状検査で一致した成績は得られなかった。3. アグー精子は室温放置O時間区が,および2時間区よりMotileおよびProgressiveが高く維持される傾向を示し,精子細胞膜正常率,アクロシン活性および体外受精における精子侵入率も有意(P>O.05)に高い値を示した。また,室温放置時間が短いほど精子性状性が高く維持される傾向にあった。4. ランドレース精子は室温放置O時間区が,1および2時間区よりMotileおよびProgressiveが高く維持される傾向を示した。しかし,精子細胞膜正常率,アクロシン活性および体外受精における精子侵入率は,各室温放置時間区間に差は認められなかった。以上のことから,ランドレースでは精子処理液や室温放置時間について, 一致した評価が得られなかった。しかし,アグー精子の場合は,採精後素早く精漿を除去し,BTSを添加・洗浄した後,室温放置なしで希釈液を加え,冷却・凍結処理を行うことが有効な方法であると示唆された。
- 2006-12-00
著者
関連論文
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(3)ミトコンドリアDNA d-loop領域における母系解析
- 国産測定器PIT-1(ブリードテスタ)による豚深部腟内電気抵抗(VER)値の測定と繁殖機能の簡易診断
- ミトコンドリアDNA非コード領域による琉球在来豚アグーの母系解析
- 琉球在来豚(アグー)を活用した銘柄豚の確立(6)アグー交雑種の肥育試験および肉質評価
- 琉球在来豚(アグー)を活用した銘柄豚の確立(5)アグー雄と他品種の雌との交配による分娩成績および育成成績
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(4)アグー識別技術の開発
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(2)フィールド調査による体型と特徴
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(4)凍結精液希釈液へのアスコルビン酸-α-グルコシドの添加が融解後の精子性状に及ぼす影響
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(3)膣内粘液電気抵抗値の変動と性ホルモン濃度の動態との関係
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(2)膣内粘液電気抵抗値を指標とした発情開始日および授精適期の推定
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(1)23個のマイクロサテライトマーカーを用いたアグーのDNA多型解析
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(1)ブタ凍結精液作製時の室温放置に用いる精子処理液と放置時間の検討
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(6)凍結精液希釈液への鶏卵黄由来低密度リポタンパク質(LDL)の添加が融解後の精子性状に及ぼす影響
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(5)発情徴候不明瞭豚における性ホルモン動態と膣内粘液電気抵抗との関連
- 琉球在来豚アグーを増殖させるための繁殖技術
- 琉球在来豚アグーの概要とブランド化への取り組み (沖縄特集 沖縄養豚の歴史とこれから)
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(1)
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立 (3)
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(4)
- 琉球在来豚(アグー)を活用した銘柄豚の確立(6)
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(1)
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(2)
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(3)
- 琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立 (4)
- 琉球在来豚(アグー)を活用した銘柄豚の確立(5)
- 琉球在来豚(アグー)の近交退化を緩和するための育種技術の確立(2)フィールド調査による体型と特徴