保存蚕品種における量的諸形質の品種特性-3-繭形と繭の計量形質との相互関係
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概要
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蚕糸試験場で系統保存されている268種の地理的品種について,繭長,繭幅,長幅率及び繭容積を調査して品種特性の解明をはかるとともにそれらの形質間ならびにそれらの形質と繭重,繭層重,繭層歩合との関係を検討し,次の結果を得た。1.繭長,繭幅,長幅率及び繭容積は品種によって著しく相違し,繭長は24.4~44.2mm,繭幅は13.0~26.6mm,長幅率は40.0~78.6%,繭容積は2.90~10.00cm3までの広範囲に分布した。2.地理的品種間差異をみたところ,繭長では日本種>欧州種>熱帯種>眠性種,繭幅では欧州種≒眠性種≒日本種>熱帯種,長幅率では眠性種>欧州種>日本種>熱帯種,繭容積では日本種>欧州種>眠性種>熱帯種の順に大きい傾向が認められた。中国種は飼育時期が異なるため断定はできないが,繭幅及び長幅率は他の地理的品種より大きいものと推察した。3.日本種と中国種について在来種と改良種の比較を行ったところ,日本種,中国種ともに改良種の繭容積は在来種のそれより著しく大きかった。また,改良種は在来種に比して日本種では繭長,繭幅ともほぼ同じ割合で大きくなっているのに対して,中国種では繭幅は日本種の場合とほぼ同じ割合で大きくなっているものの繭長の増大はごく僅かであった。4.繭長,繭幅,長幅率及び繭容積間の相互関係を調べたところ,繭長と繭幅間では日本種,欧州種及び中国種において正の相関が示されたが,日本種の場合に高かった。繭長と長幅率間では熱帯種を除く他の品種において負の相関が認められた。繭長と繭容積間では熱帯種を除く他の品種で正の相関がみられたが,日本種及び欧州種において係数は高かった。繭幅と長幅率間では熱帯種以外の品種で高い正の相関が示され,繭幅と繭容積間ではいずれの場合も高い正の相関がみられた。長幅率と繭容積間では中国種においてのみ正の相関がみられた。5.繭形と繭重,繭層重及び繭層歩合との相関関係を解析した結果,繭長は繭重及び繭層重との間で日本種と欧州種において高い正の相関がみられ,中国種においても正の相関を示した。また,繭層歩合との間では日本種でのみ正の相関がみられた。繭幅は繭重との間ではいずれの品種においても,繭層重及び繭層歩合との間では日本種,眠性種,中国種において正の相関を示したが,いずれの場合も眠性種と中国種で高い値であった。長幅率は繭重との間では眠性種と中国種において,繭層重及び繭層歩合との間では中国種においてのみ高い正の相関がみられた。繭容積は繭重及び繭層重との間では熱帯種以外のすべての品種において,繭層歩合との間では日本種,眠性種,中国種において高い正の相関が認められた。6.以上の結果から,繭の諸形質間の相関関係の現れ方は地理的品種によって異なり,日本種型と中国種型に大別され,日本種と欧州種,中国種と眠性種はそれぞれ同じような相関関係を示すことが判明した。さらに,繭形の品種特性を把握する上で,日本種では繭長,中国種では繭幅が重要であると推論した。
- 農林省蠶絲試驗場の論文
- 1985-01-00