桑園における稲わら類及び蚕ぷん蚕さ施用による土壌有機物の集積と分解
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概要
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火山灰土型桑,赤黄色土型桑園及び沖積土型桑園において,稲わら,マルチ残存稲わら,稲わら堆肥及び蚕ぷん蚕さの分解過程をストッキング埋設法によって3年間追跡し,次の結果を得た。1.全炭素は埋没3月後までにその大半が分解され,その後における分解は緩慢に進行した。資材的には蚕ぷん蚕さ>稲わら≒マルチ残存稲わら堆肥の順にあった。土壌的には埋設3月後までの分解は火山灰土で大きく,その後の分解は沖積土及び赤黄色土で大きい傾向にあった。この傾向は稲わら及びマルチ残存稲わらで明らかであった。2.全窒素は蚕ぷん蚕さ及び稲わら堆肥の場合は全炭素とほぼ平衡して分解が進行し,埋設当初からの窒素の放出が示された。土壌的には全炭素の場合と逆の関係にあると思われた。稲わら及びマルチ残存稲わらの場合は埋設3または9月後まで窒素の取り込みが認められたが,その量及び期間ともに稲わらの方が上回った。その後は分解が進行したが,稲わらの場合,沖積土では分解開始直後において急速で2年目以降緩慢となったのに対して火山灰土では3年後までほぼ同一速度で進行した。赤黄色土では中間的経過をたどった。ただし,3年後における残存率は土壌間での差が小さく,3種土壌で全炭素残存率を上回った。マルチ残存稲わらの場合は3年後までほぼ同一速度で分解が進行する傾向にあったが,分解速度は沖積土>赤黄色土>火山灰土の順にあり,3年後の残存率は沖積土において明らかに低かった。なお,分解開始時の炭素率は両資材を通じて12~16であった。3.粗大有機物の消失は稲わら及びマルチ残存稲わらで遅く,蚕ぷん蚕さ及び稲わら堆肥で速やかであった。土壌的には赤黄色土で遅かった。4.稲わら堆肥及び蚕ぷん蚕さ試料の場合,埋設3または9月後にかけてpHが上昇したが,その後は経年的に低下した。このpH上昇効果は稲わら堆肥において大きい。稲わら及びマルチ残存稲わら試料の場合は9月後または1年後にかけてpHが一旦低下したが,その後上昇し,2及び3年後には埋設前の混和用土壌のpHあるいはこれをやや上回る水準にあった。なお,pHの変動は沖積土で大きく,火山灰土で小さかった。
- 農林省蠶絲試驗場の論文