蚕の人工飼料育における糸状菌病の発生抑制
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概要
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蚕の糸状菌病防除の立場から，市販の人工飼料をおもに用いて，蚕児の人工飼料育中における糸条菌病発生と桑葉育におけるそれとの差異，及び人工飼料上での糸状菌の生育様態について調査し，つぎのような結果を得た。1.蟻蚕に黄きょう病菌または麹かび病菌を接種した後，それらを人工飼料で飼育したところ，桑葉育区の糸条菌病死率が100％に達する場合においても，人工飼料区における糸状菌病の発生はほとんどみられなかった。2.人工飼料上に病原糸状菌を置いた場合，多くの飼料では，黄きょう病菌は1日後に，麹かび病菌は3日後にそれぞれ死滅していた。したがって，人工飼料育において，黄きょう病や麹かび病の発生が極端に抑えられる主因は，人工飼料に添加されている防腐剤による静菌または殺菌効果によるもので，その効果の著しいことが分かった。3.一方，上記と違って，非病原菌であるが，人工飼料上で強い生存力をもち，容易に生育してコロニーを形成する糸状菌Paecilomyces variotiiが見いだされた。本菌は蚕飼育場所から比較的高頻度に検出され，30～35℃の高温域での初期生育が著しいため，今後，人工飼料を劣化させる糸状菌として注目すべき菌種と考えられた。4.今後の人工飼料育における蚕作安定のためには，病原菌対策に限らず，Paecilomyces variotiiのような人工飼料劣化因子としての糸状菌に対する新たな技術対策の必要なことを指摘した。
- 農林省蠶絲試驗場の論文
- 1984-08-00