畑作新生産システムの現段階と経営モデル分析手法[含 参考資料] (与件変動下における畑作農家の経営行動と展開条件)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
(1)統計データをもとに、作物ごとの作付規模別、期間別全要素生産性の計測を行った。その結果、規模の経済性は必ずしも発揮されておらず、作付規模が拡大するほど、生産性が逓減、または停滞、さらには縮小するケースがある。規模拡大によって省力化が図られるものの、逆に固定資本の投入が増加するため、生産性の向上を阻害していると考えられる。低コスト化と規模拡大を両立するためにも、生産性の向上を図る低投入型の技術開発が求められる。(2)大規模畑作経営の普及が期待されるてん菜の直播栽培や多畦収穫、加工用ばれいしょのソイルコンディショニング栽培、大豆の狭畦栽培、休閑緑肥等を活用した新生産システムの評価、分析を行った。それら新技術は、慣行技術に比べ、大幅な省力化を可能にするものの、生産コストの面では、機械費や賃料料金が労働費に取って代わるのみで、必ずしも大幅な低コスト化にむすびついていない。低コスト化という目標に対しては、さらなる収量増加、または低投入(省肥料、省農薬)を可能にするような技術改善が求められる。(3)また、経営モデルの分析により新生産システムの大規模畑作経営における導入効果を明らかにした。てん菜、ばれいしょ、大豆に関する新技術の導入は、慣行での限界を超える規模拡大を可能とし、さらにばれいしょの作付拡大が可能となることで、大幅な所得増加をもたらす(ただし、休閑緑肥は他の新技術と併用することで導入メリットがなくなる)。(4)さらに、技術条件をパラメトリックに変化させた場合の試算を行ない、新技術の改善方向を検討した。第一に、てん菜直播で懸念される雑草対策の徹底によって、新生産システムの導入効果が生まれることを示した。各技術の効果を最大限発揮するよう、戦略的な防除体系の確立が望まれる。第二に、てん菜直播やばれいしょソイルコンは、それぞれの収量水準が農家行動に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。わずかな収量減少が、当該技術のみならず、他の技術の選択行動にも影響し、新システムの導入効果を大幅に減退させてしまう可能性がある。てん菜直播やばれいしょソイルコンは天候や作業制度によって収量が大きく左右されるため、収量の安定化、そして向上させるような栽培技術の改善が求められる。
- 北海道農業研究センター総合研究部の論文
北海道農業研究センター総合研究部 | 論文
- 畑作酪農地域における共同ふん尿処理施設の実態と利用状況 (酪農経営におけるふん尿処理技術の導入条件)
- 収穫機導入によるキャベツ収穫作業の軽作業化と機械化体系の違いによる労働特性の比較 (畑作地域総合研究のフィージビリティスタディ)
- 主要畑作地帯における畑作経営規模の動向予測 (畑作地域総合研究のフィージビリティスタディ)
- 北海道における気象変動と農業経営安定化の課題 (水田作および畑作経営の新たな展開とマネジメント)
- ばれいしょ新生産システムに関する事前評価 (畑作地域総合研究のフィージビリティスタディ)