水稲高温登熟障害の生理生態学的解析
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概要
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近年、西日本を中心に多発しているイネの高温登熟障害の発生に及ぼす日射量、施肥、品種、高夜温の影響とその要因について解析した。1.人工気象室で登熟期の気温を平年より3℃高くすると玄米1粒重と玄米外観品質が低下したが、作期移動など登熟期の気温と日射量がともに上昇する条件では玄米1粒重は低下せず、良質粒歩合の低下程度は小さかった。高温と低日射が重なると、普及品種ヒノヒカリでは高温耐性品種にこまるよりも粒重増加速度が低下し、玄米1粒重と玄米の粒張りが低下した。2.穂肥の量を増やすと、高温年では玄米1粒重が増加し外観品質が向上した。穂肥を出穂前後の1ヶ月間に15回に分けて与える施肥法では2回与える慣行法に比べて、また、にこまるではヒノヒカリに比べて、それぞれ未熟粒歩合が低下した。これらの品質向上の要因として、穂揃い期の茎葉における貯蔵炭水化物の増加が考えられた。3.玄米1粒重は高夜温(22/34℃)で低下し、高昼温(34/22℃)ではほとんど低下しなかった。穂と茎葉に別々に高夜温処理を与えた実験や粒重増加推移の解析、胚乳細胞の画像解析などにより、高夜温条件では粒重増加速度と玄米への乾物分配率の低下および胚乳細胞の成長抑制が玄米1粒重の低下に密接に関与していることが示された。以上、本研究では高温低日射条件でも登熟が不良になりにくい品種特性や施肥法を示したほか、高夜温が成熟期の玄米1粒重を低下させるプロセスを明らかにした。
- 農業技術研究機構九州沖縄農業研究センターの論文
- 2009-08-00
農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター | 論文
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