ナラ類の集団枯損に関する防除技術の開発
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概要
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カシノナガキクイムシの生態と防除。1.ナラ類枯損木におけるカシノナガキクイムシの生息数、脱出成虫数および発生消長(1)ナラ枯れ木全体におけるカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)の総穿入孔数(Y)は、樹幹高0.75〜1.0m間の穿入孔数/m2(X)で推定された。すなわち、90個以上の場合はY=8.57X-162.5で、また40個以上90個未満の場合はY=7.76X-104.8で推定され、さらに40個未満の場合は平均で141個と考えられた。2.カシノナガキクイムシの穿入状況と枯損の発現(1)2004年におけるカシナガのミズナラに対する初期穿入(アタック)は、脱出後速やかに行われ、おおむね脱出20%期にピークを迎え、脱出終了期まで続くものと考えられた。また、ミズナラの枯損は、初期穿入2週目(穿入から8〜14日目の間)から始まって、4週目(穿入から22〜28日目の間)にピークを迎え、6週目(穿入から36〜42日目の間)に終了した。なお、ミズナラの枯死と関係の深い穿孔部位は高さ0〜0.50mの樹幹部であり、当該部位の穿入孔密度は少なく見積もっておおむね90個/m2を上回るものと考えられた。3.カシノナガキクイムシの駆除(1)ナラ枯れ木を秋期に伐倒して100(対照木)、50、40、30、20、10および5cmに玉切って、100cmは日当たりの良いナラ枯れ林の林床に直接、それ以外は直接林床に接さないように枕木上に放置した。その結果、時間の経過とともに死亡虫率が高まり、羽化脱出期には長さ20cm以下の丸太で100%、また30cmで96.9%、40cmで99.6%とかなり高いまたはほぼ完全な死亡虫率を示した。さらに、50cmでも94.1%とかなりの死亡虫率を示した。なお、枕木上の放置はさほど含水率の低下(死亡虫率の上昇)をもたらさなかった。ナラ類集団枯損の様相。1.福島県におけるナラ枯れは2000年秋に初めて西会津町で確認され、以降2003年までの最大拡散距離の平均値は6.0±3.2kmであった。しかし、2004年は南東方向に新たな被害が連続して発生し、会津盆地の西山麓から35〜45km離れた中通りでも新たな被害が認められた。被害が急速に拡大した原因の一つとして、6月22日に発生した台風6号による北西寄りの強い吹き返しに乗って、カシナガが南東方向に数十kmも大量に移動し、ナラ枯れを引き起こした可能性が高いと考えられた。
- 福島県林業研究センターの論文
- 2009-04-00