水族館飼育下で観察されたツバメコノシロ科魚類Polynemus multifilisの長い遊離軟条による接触物の識別と回避行動
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概要
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ツバメコノシロ科魚類は、温帯・熱帯の海域から淡水域にかけて8属41種が分布し、いずれもが胸鰭下部に鬚状の遊離軟条を有している。本科のほとんどの種では、その遊離軟条は体長より短いが、Polynemus属(全8種)など一部の種は体長よりも長い(以下単に「長い」と記す)遊離軟条と短い遊離軟条を併せもつ特異的な形態である。本科魚類の遊離軟条は濁った水中で視覚の代わりになる感覚器官と示唆されているが、遊離軟条の具体的機能についての報告は少ない。飼育下における索餌行動の観察によると、短い遊離軟条のみをもつツバメコノシロでは、視覚と遊離軟条による触覚を使い分けて索餌するが、長い遊離軟条をもつPolynemus属2種では、より遊離軟条に依存して索餌する。また、土井ほかはPolynemus multifilisの飼育下観察によって、遊離軟条が餌だけでなく地形や障害物を感知し、特に3対の長い遊離軟条は障害物の感知と回避に関与することを示唆した。この観察において、本種は新規に設置した障害物(塩ビパイプ)に触れると回避したが、水槽内にもともと設置されている給排水用パイプ、底石、擬岩などに触れても回避しなかったことから、本種は接触物を識別して回避していることが予想される。
- 2009-04-27
著者
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土井 敏男
神戸市立須磨海浜水族園
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DOI Toshio
Kobe Municipal Suma Aqualife Park
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土井 敏男
Kobe Municipal Suma Aqualife Park
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