長野県におけるツキノワグマ(Ursus hibeanus)の里地への出没時期と年齢査定による大量出没要因の解明
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概要
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2006年度は、全国で多数のツキノワグマが里地に出没して、長野県では558頭もの個体を捕殺する大量出没年となった。捕獲個体の出没時期と年齢査定の分析から大量出没の要因について考察した。ツキノワグマの里地への出没時期は、平年では7月から増加し、8月に最大となり、9月には終息する。しかし、大量出没した2006年には、9月に入り減少したが、10月に入り再び増加した。ツキノワグマにとって、本州中部において最も重要な食料資源はミズナラの堅果であり、平年では9月中旬より1,000~1,500mの山地帯で食い溜めに移行する。しかし、2006年は奥山で深刻な食糧不足があったため、再び里地に移動したことが示唆された。ツキノワグマの平均年齢は奥山が高く、里山の方が低い。平年では、里山で捕獲される個体は親から分散した若齢個体が多いためと考えられる。しかし、大量出没となった2006年は、若齢個体に加え、奥山と同じ高齢個体が多く出没したと考えられた。2006年は奥山ほど食糧不足が深刻であったことが示唆された。
- 信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センターの論文
- 2008-03-00
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター | 論文
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