山岳積雪の高度依存性
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概要
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1995年-2004年の10シーズンにわたり、信州大学演習林研究室(現AFC研究室)では中央アルプスの山岳林標高1300-2700mの比高100m毎の15定点において、毎月積雪全層の断面観測を行った。総数500ピット(深さ平均112cm、累計558m)のうち、密度を測った雪層数は2610層(平均厚さ15.6cm)である。観測結果と考察の大要は以下の通りである。1.中央アルプスは厳冬期には麓から気温が低いため、標高にともなう雪質の変化が少なく、造晶系(こしもざらめ、しもざらめ)の雪が多い。多雪年には焼結系(こしまり、しまり)が増加し、寡雪年には造晶系の雪が増加する。2.標高と雪層密度の正相関は液相系のない1月2月の厳寒期に高い。3.積雪が多い厳冬期には、新雪が供給される上層と、長期間の変態を経た下層では、雪質と密度が大きく異なる。下層は圧密により密度が増大し、上層は風成雪により密度が増大する。4.上載積雪荷重と層密度との相関は、焼結系で高く圧密が顕著で、造晶系、液相介在系(氷板、ざらめ)の順に相関が低くなる。5.標高が高いほど、細粒のこしまり雪が出現する。高所では低気温と強風により吹雪で雪粒が粉砕される機会が多いことを、粒度が示している。12-2月の粒度が細かいこしまり雪では、粗いものよりも密度が高い。上載積雪荷重が小さい雪面付近でこの傾向が顕著である。したがって標高が高いほど吹雪頻度が高く、微少な結晶破片の堆積した雪面の隙間に氷の粉塵が充填され、焼結の進行によって高密度の風成雪が生まれると推定される。6.12-6月の月積雪深は標高と1次の正相関を示す(相関係数0.91以上)。一方、積雪の全層密度と標高とは中程度の1次の正相関を示す。これらの結果、毎月の積雪水量は標高との2次曲線関係で増加する。7.積雪深が50cmをこえると、地面と接する積雪下層の平均温度は0℃に近い。
- 信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センターの論文
- 2007-03-00
信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター | 論文
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