胎盤における凝固線溶物質,特にpalacental plasminogen activator (PPA)の局在に関する免疫組織化学的研究
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概要
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目的:生化学の進歩と共に,抽出や精製に関する技術の発達はめざましく,凝固線溶系に関しても,種々の物質が発見され,その生理的意義が解明されつつある,我々は初めて胎盤から線溶系酵素,すなわちplacental plasminogen activator (PPA)を抽出・精製することに成功した.今回,酵素抗体法によって,胎盤組織のPPAを染色すると共に,凝固系関連物質であるfibrinogen (FBG), fibronectin (FN)も染色し,それらの組織学的局在およびその生理的意義を明らかにせんとした.方法:このPPAを家兎に免疫した後,この抗血清のIgG分画を取り,ペプシン分解によって抗PPAF (ab')_2を調整し,酵素抗体法(間接法)にて凍結切片を染色した.他の抗体もすべてF (ab')_2とした.結果:(1)初期絨毛ではPPAは栄養膜細胞の細胞質が弱陽性,FNは絨毛の間質が陽性に染色された.またPPA,FBGとFNの3者とも絨毛間fibrinoidが強陽性に染色された.(2)初期脱落膜では,PPAは腺管の管腔側表面と分泌物が強陽性,血管の平滑筋と内皮細胞が陽性,脱落膜細胞は弱陽性に染色された.またFBGとFNは脱落膜細胞の間質が陽性に染色された.(3)末期胎盤では,PPAは絨毛と基底板にある合胞体細胞の遊離縁が強陽性,合胞体細胞の細胞質は陽性に染色された.FBGは絨毛血管の胎児血が陽性,FNは絨毛の間質が陽性に染色された.また3者とも絨毛間fibrinoidが強陽性,基底板fibrinoidは陽性に染色された.結語:(1)PPAは栄養膜細胞で合成され,遊離縁より分泌される.(2)FBGは血漿中に存在し,胎盤の絨毛を構成する細胞ならびに間質に存在しない.(3)FNは絨毛間質の基質に存在し,細胞の構築に関与している.(4)PPA,FBGとFNはfibrinoid上で同じ分布を示すことから,"fibrinという場"で活発に凝固線溶現象を行っている.以上のことが推論された.rights: 社団法人 日本産科婦人科学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation:isVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110002190976/
- 社団法人 日本産科婦人科学会の論文
- 1986-01-01
社団法人 日本産科婦人科学会 | 論文
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