子宮内膜症における血中CA125上昇機序に関する臨床的考察
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概要
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子宮内膜症をはじめ各種婦人科良性疾患において, 組織中, 腹水中, 体液中CA125濃度を測定し, 血中レベルと比較し, CA125上昇の機序を臨床的に考察した. 1. 正所子宮内膜組織中のCA125濃度は子宮筋腫と子宮腺筋症とで同様の変動を示し, 増殖期前期に最高値をとり, その後低下し増殖期後期から分泌期前期に最低値を示し, 分泌期後期に再び高値を示し月経期に移行した. 2. 子宮腺筋症患者より摘出した腺筋症組織中のCA125濃度は, 子宮筋腫の, 筋腫核以外の肉眼的に正常と思われる筋層組織中のCA125濃度より高値を示した. しかし, 子宮内膜組織中のCA125濃度変化と違い, 両者とも性周期による変動を認めなかった. 3. 腹水中CA125濃度は妊娠初期, 急性虫垂炎時の腹水および卵巣過剰刺激症候群時の腹水が高値を示した. しかし, 子宮内膜症, 子宮筋腫患者腹水中濃度はいずれも比較的低値であった. 4. チョコレート嚢胞液中のCA125濃度は月経血より低値を示した. 卵巣過剰刺激症候群嚢胞液中濃度は腹水中濃度が高値にもかかわらず低値を示した. 5. 正常腹膜組織中にはほとんどCA125が存在しなかったが, 急性虫垂炎時の炎症性腹膜と卵巣過剰刺激症候群患者の嚢胞壁組織中には高濃度のCA125が存在した. 以上より, 子宮内膜症で血中CA125値が上昇する原因の一つは, 異所子宮内膜細胞の量的増加によるものと考えられる. 子宮腺筋症の場合は異所子宮内膜よりCA125が血中に流入しやすい環境にあるため, 高値を呈するのに対し, チョコレート嚢胞の場合は嚢胞の内腔に向かつてCA125が分泌されるため, それはど血中レベルが上昇しないと考えられる. また, 急性虫垂炎の場合のように腹膜に急性炎症等の刺激が加わると, 腹膜よりCA125産生が惹起される可能性があり, 腹水を介し血中レベルが上昇するものと考えられる.rights: 社団法人 日本産科婦人科学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation:isVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110002113015/
- 社団法人 日本産科婦人科学会の論文
- 1988-04-01
社団法人 日本産科婦人科学会 | 論文
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