グローバル市民社会の展望--人権と正戦の関係をめぐって
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概要
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1990年代、「新しい戦争」といわれる武力紛争が各地に生じ、深刻な人権侵害が引き起こされた。それに対し国際社会は人権保護と正義の観点から「人道的介入」という名の武力行使を遂行した。本稿はこの問題をめぐって、カントを批判的に再構築しようとするハーバーマスの議論を取り上げる。彼はシュミットの正戦論批判に反論し、グローバルなレベルでの強制的実定法秩序の成立が、善-悪のコードに左右されずに法制度によって人権侵害に対処することを可能にすると主張する。とはいえ法権利を保障する国際法体系が不十分な現状では、民主的法治国家から成る「組織化された国際社会」が、世界市民的秩序の代行として人道的介入を行うことも止むを得ないと言う。しかし〈法の領域があるかのようにふるまうこと〉は〈法による保障そのもの〉と同じではない。このズレに善-悪のコードが忍び込みはしないのか。本稿ではこうしたハーバーマスの議論に潜む問題点を明らかにすることで、グローバル市民社会の規範的方向性を検討する。Since the 1990s, "the new war" violates human rights seriously in particular places. The international society conducts humanitarian intervention on grounds of the protection of human rights and justice. In relation to this, this article picks up Habermas's argument which reconstructs Kant critically. Habermas counters Carl Schmitt's criticism of just war and claims a vision of global legal law order which would be able to judge human-rights violationwith legal force. But now the international law system is not adequate, so he justifies that international community of democratic law-governed states conducts humanitarian intervention as surrogate of the future global civil society. However, behind the back of his argument, the good-bad code may be in hiding. This article explores the problem of Habermas's argument and then considers a normative vision of the global civil society.
- 京都女子大学現代社会学部の論文
- 2009-12-00
京都女子大学現代社会学部 | 論文
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