子の監護権決定における親子関係 : 英米判例の意義
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
離婚において子どもの監護権を両親が争うとき、どのような判断基準によって裁判所は片方の親に監護権を認定するのだろうか。本稿でとりあげる判例は、それぞれ、アメリカ合衆国と英国において、幼児の監護権につき、母親優先という単純な原則を適用しなかった判例主である。それでは裁判所は何を基準として、子どもの福祉に決定的な意味をもっ監護権者を決定したのであろうか。それは端的に言えば、離婚交渉中、あるいは別居中にも渡って、形成されてきた親子関係である。合衆国ではその基準は、ジェンダー中立的な「主たる養育者」優先原則と表現される。もちろん、基準の中立性は、必ずしも現実のジェンダー役割を修正し、父と母の実質的平等を実現することを確約するものではないし、基準が中立であるためにかえって現実の不平等性が正当化されることもあるのは否めない。しかし、少なくとも、決定基準自体がジェンダー役割を直接に正当化し、固定化するようなことは回避しようという立法府あるいは裁判所の企図は評価されねばならない。母親優先原則に替わるべき、子どもの利益とジェンダー平等という観点からの基準を採用しているという点で、これらの判決は日本の裁判基準に対してなお示唆するところが大きいと思われる。本稿では、まず判例の事実関係を要約し、次に判断基準について若干の考察を試みることとする。When parents dispute over their child's custody the court is confronted to a difficult question of choosing one of them as custodian, which vitally affects the child's well being for a considerable long period. This note addresses the rule of custody award in the Anglo-American law system, especially in terms of the evaluation of the parent-child relationship and the policy of gender equality. Taking up two leading cases of custody disputes, one in the United States, the other in England, we will first overview each case to make clear what the rule of decisions are, second examine each case's evaluation of the relationship of the child with the parent/caregiver. Finally, we will consider the meaning of the gender roles to the care of the child and rule of custody law.
- 京都女子大学現代社会学部の論文
- 2001-03-30
京都女子大学現代社会学部 | 論文
- 京都女子大学における学内LAN(KWIINS)の構築とこれを基盤とする情報教育プログラムの構築・運用
- 身体的性差と社会的性差--日本女性史の視座 (公開講座報告 '性差'を考える--自然科学と人文・社会科学のクロスオーバー)
- [京都女子大学]現代社会学部公開講座 市民のための科学リテラシー入門--『ニセ科学』にだまされないために
- 大統領の指示権に関する一考察
- 講演 ICT活用による安心・安全な健康、医療、福祉の環境整備 ([京都女子大学]現代社会学部公開講座 情報技術と現代社会--技術の現在、社会のゆくえ)