中国内モンゴル自治区のフルンボイル草原における観光行動が植生に及ぼす影響
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概要
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内モンゴル自治区では近年草原を利用した観光が盛んになっており,その観光行動が草原の退化を促進している可能性がある.しかし,既往の研究では草原退化の原因として過放牧,気候変動,過開墾を検討しているものの,観光行動が草原退化に与える影響については未だ明らかになっていない.そこで本研究では,内モンゴル自治区で一大観光地となっているフルンボイル草原の利用圧が異なる2つの観光地 (以下A,B と記す ; 利用圧はA>B) において,観光行動が植生に与える影響を評価した.いずれの観光地でも,乗馬,バギー体験,散策などの観光活動の有無により利用区と非利用区を設け,各区で現存する植物の種構成,草丈,植被率,株数を測定するとともに,地上部バイオマス量を草丈および株数より推定した.その結果,いずれの観光地でも植被率,地上部バイオマス量,優占種の草丈については利用区で非利用区に比べ有意に低下した (p<0.01).植生については,両観光地の非利用区でCarex duriuscula C.A.Mey. (ノヤマスゲ・カヤツリグサ科 : 草原退化の指標植生) とともにLeymus chinensis (Trin.) Tzvel. (シバムギモドキ・イネ科 : 優良牧草) が優占したのに対し,利用区では草原退化の指標植物であるC. duriusculaのみが優占していた.また,利用圧の高いA 観光地の利用区では,Plantago asiatica L. (オオバコ・オオバコ科),Lepidium apetalum Willd. (ヒメグンバイナズナ・アブラナ科),Taraxacum asiaticum Dahlst. (タンポポ・キク科) などの荒れ地や路傍に生育する草種も見られた.以上のことから,観光地を問わず,観光行動が草原植生の劣化を引き起こすことが示された.よって,今後草原退化の対策を考える上では,観光活動を行う際にも考慮する必要があると考えられる.
- 2012-03-30
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