中部日本亜高山帯林におけるダケカンバとウラジロカンバの林冠木特性と稚幼樹の出現
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概要
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同属近縁の先駆樹種であるダケカンバとウラジロカンバの共存メカニズムを明らかにする目的で,両樹種の林冠木特性と異なるマイクロサイト上での稚幼樹の出現を,中部日本亜高山帯常緑針葉樹林の老齢林分と隣接する台風による大規模撹乱地で調査した。両樹種とも老齢林分の林冠層の非優占樹種であった。ダケカンバの林冠木がウラジロカンバの林冠木よりも,胸高直径や樹冠面積が大きく,より普遍的に出現したことは,ダケカンバが顕著な林冠樹種であることを示している。両樹種の稚樹(0.05m≦高さ<l.3m)は,林冠ギャップ下ではすべての基質上(地表面,倒木,根返りマウンド,腐朽株)で出現したが,閉鎖林冠下では地表面と腐朽株上で出現しなかった。両樹種の幼樹(1.3m≦高さ<林冠層)は閉鎖林冠下では出現しなかったが,林冠ギャップ下ではダケカンバは地表面と腐朽株上で,ウラジロカンバはさらに根返りマウンド上でも出現した。したがって,両樹種は閉鎖林冠下でも林冠ギャップ下でも,その定着に適した基質は類似しているようである。しかしながら,ダケカンバはウラジロカンバよりも定着に対してより大きなギャップを必要とする。台風による大規模撹乱地では,あらゆる基質上で多数の大サイズのダケカンバの幼樹が出現したが,ウラジロカンバの幼樹はいくつかのタイプの基質上でわずかしか出現しなかった。これらの結果は,ダケカンバとウラジロカンバは撹乱と関係してギャップサイズを分割することによって共存しており,小ギャップ形成のような小規模撹乱はウラジロカンバの定着を,大規模撹乱はダケカンバの定着を促進することを示唆している。
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名古屋大学農学部附属演習林 | 論文
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