〈原著〉強制走行負荷による非侵襲性マウス変形性膝関節症モデルの作成
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概要
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[抄録] 目的:非侵襲性で再現性に優れたマウス変形性膝関節症(OA)モデルを作製し, その特性を明らかにする. 方法:マウス用走行強制トレッドミルを使用した.(1)経時的変化観察群:マウスに1回15分, 11m/分の速度, 1週間に3回(2週間当たりの走行距離1km)で, 2, 4, 6, 8週間の走行負荷を加えた(各n=4).(2)走行時間変化群:短時間走行群(1回7.5分, 1週間に3回走行)と長時間走行群(1回30分, 1週間に3回走行)を2週間走行させた(各n=4).膝関節の変形はX線的および組織学的に評価した.関節軟骨変性の評価には国際関節症学会(OARSI)評価スケールを用いた.また軟骨変性のマーカーであるII型コラーゲンおよびX型コラーゲンの発現変化を免疫染色にて評価した. 結果:組織学的変化:半月板骨化, 骨棘形成, 十字靱帯変性および断裂, 関節軟骨変性が認められ, これらの変化の出現頻度は経時的に増加した.OARSIスコア:経時的変化観察群および走行時間変化群の両群において, それぞれ走行週数および一回当たり走行時間に依存してスコアは増加した.また, OA変化は全て膝内側コンパートメントに比較し外側コンパートメントに顕著であった.関節軟骨におけるII型コラーゲンの発現は走行負荷により減少し, X型コラーゲンは発現の増加がみられた. 結論:本モデルの利点として運動負荷が生理的であること, 作成方法の単純さと非侵襲性, そして何よりもOAの高い再現性および調節性が挙げられる.そして, 遺伝子操作が可能なマウスを使用する本モデルでは, 機械的負荷によるOAの発症および進行を, 遺伝子レベルにおいて解明できる可能性が大きく示された.