C型慢性肝炎に対するペグインターフェロンαとリバビリン併用療法 : 九州大学関連肝疾患研究会 : Kyushu University Liver Disease Study(KULDS)の成績を踏まえて
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概要
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九州大学病院ではいくつかの診療科で肝疾患患者を診療している. 内科系では総合診療科がウイルス性肝炎を, 膠原病・免疫・感染症内科では自己免疫性肝炎を, 肝臓・膵臓・胆道内科では肝臓癌を中心に診療しているが, 必ずしも完全に疾患別にはなっていない. 現在, わが国の慢性肝疾患の大部分はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus : HCV)によるものであり, それに対してはinterferon(IFN)療法が行われている. 九州大学病院としては各科ごとに治療し, その成績を各科ごとにまとめても, 症例数が少なく臨床研究として価値ある報告ができず, 他の研究施設の後塵を拝することになる. そこで, 2003年9月に「九州大学病院における肝臓病治療の新しい試み」として座談会を行ない, C型慢性肝炎に対するpegylated(PEG)IFN αとribavirin(RBV)併用療法について, 九州大学の関連病院で肝臓疾患の診療に従事している医師にも協力を依頼し, 大規模多施設共同臨床研究を開始することとした. その研究組織として九州大学関連肝疾患研究会(Kyushu Liver Disease Study : KULDS)を立ち上げ, 世界に通用する症例数の多い臨床研究を目指した. したがって, 本稿に述べる内容は九州大学総合診療科(九州大学大学院感染環境医学分野)での独自の研究もあるが, 主としてKULDS の成績をまとめたものもある. 前置きが長くなったが, わが国は世界的にみてもHCV の高浸淫国であり, 感染者は150-200万人いると推定されている. その60%以上は程度の差こそあれ慢性肝疾患に罹患していると考えられ, また, C型慢性肝炎患者は年間5-6%に肝癌を発症することが判明している. HCV感染者が癌年齢に達してきた現在, わが国における肝癌による年間死亡者数は1970 年頃の約10, 000人から, この30年間に3倍に増加し, 現在では34, 000人に達し, 悪性新生物の中では胃癌, 肺癌とほぼ肩を並べている. 肝癌発症抑制のための最も有効な手段は, 感染者からHCV を排除することと考えられ, IFNはその唯一の原因療法の薬剤である. 本稿では, 2004年から保険適応となったPEG-IFN α-2b + RBV 併用療法の治療成績から得られたこと, さらにそれから派生した臨床研究について述べる.
- 2012-05-25