日本に舶載された欧州輸出用の中国製染織品 : 刺繍ビロード6作例の意匠と技法を中心に
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
16~17世紀に日本に舶載された欧州輸出用の中国製の染織品のうち,以下に記す刺繍ビロードの6作品を,考察対象に取り上げる。(1)鍍阿寺伝来の慢幕(2)知恩寺伝来の打敷(3)徳川美術館収蔵の唐人相撲装束羽織(4)仙台市博物館収蔵の慶長遣欧使節請来祭服(5)堺市博物館収蔵のマント(6)名古屋市秀吉清正記念館収蔵の陣羽織。(1)(2)(3)の作品は,どこで制作されたのか,何のために制作されたのか長らく不明であり,(4)(5)(6)は,欧州で製作されて日本に舶載されたものと従来考えられてきた。私はこれらの作品を個別に検討し,欧州向けの輸出を意識して作られた中国製品である可能性が高いことを指摘してきた。本稿は,今まで個別に検討してきたこれら6作例を突き合わせ,これらの作例に共通する特徴を明らかにするものである。6作品の特徴として,以下の点を指摘することができる。これらの作品の意匠は,欧州へ輸出するために中国やインドで制作された作品との類似性が最も高い。大半の意匠は欧州装飾を下敷きにしている。しかし欧州の表現としては不自然で,中国の表現に類似した特徴が細部に含まれている場合がしばしばある。欧州刺繍と関連する特徴として,強撚の極太糸を用いることや,桂撚糸で渦巻状の曲線を表すことがあげられる。また中国刺繍との共通点として,花弁に繧綱の刺し繍を用いること,岩を表す際に配色の切り替えを行うこと,鳥の羽根の質感を杢糸で表現すること,胎が紙の撚金糸を用いることがあげられる。このような6作品の特徴は,今まで欧州製と目されてきたこれらの刺繍ビロードが,欧州のオリジナル作品ではなく,中国人が制作したコピーであることを示唆している。
論文 | ランダム
- 北海道における稲育種研究の成果
- 人間工学入門-9-
- 人間工学入門-8-
- スイートコーンの機械化栽培
- 234 ガス状炭化水素資化性菌の培養に関する研究(第3報) : Nocardia corallina E-67株の蓄積する生育阻害物質について