経済学的世界観の強さと限界 : 経済学における人間の行動前提の再考そして対応方向
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概要
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本稿では,経済学の近年における発展とその応用状況を概観するとともに,問題点,対応方向を考察した。その結果以下のことを主張した:(1)経済学は精緻化・体系化,新しい手法や概念の導入,他の隣接学問領域との連携などが進み,大きな発展を遂げている(従来連携のなかったミクロ分析とマクロ分析の理論的統合,制度設計など新分野への応用増大等)。(2)こうした発展の大きな理由は人間行動に関する比較的単純な前提(人間は利己的な存在であるという仮定)にあり,その前提が経済学の論理の強さと他領域への進出(経済学帝国主義)をもたらしている。(3)経済学研究者は分析結果をともすれば単純な政策提言(効率性のために規制撤廃が必要という主張)に結びつける傾向があり,これが公共政策をゆがんだものにするリスクがある。(4)現代経済学の限界を克服するには a)実際の政策運営に際しては効率性だけでなくより多くの側面(公平性,社会の安定性,文化的価値など)も加えて判断すること,b)伝統的な経済社会観(市場か政府かという二分法)を越えた中間領域(コミュニティなど)の役割認識と分析を深めること,c)従来の狭隘な前提を見直すこと(人間の利他主義性も考慮する,利潤最大化を目的としない企業も認知するなど)によって現実的かつ実り多い学問的革命を目指すこと,の3点がとくに重要である。そして (5)究極的には,個人の人間としての深化成長が社会の調和と発展に結びつくような思想ならびに実践方法の構築が期待されるので,その線に沿った二つの試論を提示した。研究ノート
- 2012-03-27
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