ALDH2遺伝子多型と臨床医学
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概要
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2型アルデヒド脱水素酵素(aldehyde dehydrogenase 2:ALDH2)は,アルコール(エタノール)の代謝で生ずるアセトアルデヒドを酸化する酵素であり,人が酒に「強い」か「弱い」かは,この酵素の遺伝子多型に大きく依存することがよく知られている.しかし,ALDH2遺伝子多型は,単に飲酒の可否を決定するだけでなく,様々な疾患の発生や薬物の代謝と関連することが,近年明らかとなってきている.たとえば,低活性型の遺伝子型を有する人では,アルコール摂取後に血中や組織中に毒性を持つアセトアルデヒドが蓄積するため,高活性型の遺伝子型を有する人と比較して,消化管や肝臓などの癌化率が増加することが知られている.また2002 年以来,ALDH2がニトログリセリン(glyceryl trinitrate:GTN)を代謝(活性化)し,その薬効発現に関わることがわかってきた.今では,プロドラッグであるGTN をALDH2が還元代謝することで一酸化窒素(NO)が産生され,血管拡張反応が起きると考えられている.しかし,ALDH2遺伝子多型がGTNの血管拡張作用に及ぼす影響を調査する精度の高い研究は行われていなかった.そこで最近我々は,健康成人を対象とした臨床試験を実施し,GTN による血管拡張に要する時間はALDH2活性が低下するほど延長することを示し,ALDH2 がGTN 薬効発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした.さらに,ALDH2が心血管保護作用を有する可能性が示唆されている.動物実験において,ALDH2は心筋虚血再還流後の心筋梗塞範囲を減少させることが示され,ALDH2が活性酸素種(ROS)や毒性アルデヒドを減少させることがその機序と考えられている.また,GTNはALDH2阻害作用を有することから,GTN の長期投与はALDH2を抑制することにより心血管障害を悪化させる可能性も考えられる.本稿では,ALDH2 遺伝子多型と臨床医学との関わりについて,最新の知見に基づき概説したい.
- 2012-04-25
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