Syntactic Structure of Spatial Expressions in the 'Late-Byzantine Prose Alexander Romance' <ARTICLES>
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概要
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ギリシャ語における空間表現は、古代から現代にいたる変遷の中で、多くの語彙的異形を有しているが、その統語構造は比較的安定している。すなわち、古代語では、前置詞+名詞ないし副詞+属格名詞、現代語では、前詞+対格名詞、副詞+前置詞+対格名詞、副詞+接辞代名詞が許されるに過きない。ところが、ビザンツ末期(ないしポスト・ビザンツ期)のテキスト中には、これら以外のパタンが観察される。例えば、『後期ビザンツ版アレクサンドロス物語』(以下『後期ビザンツ版』)には、副詞+対格名詞の例が見いだされる。本稿の中心課題は、このパタンがどの程度の安定性を持ち、どの程度の空間的・時間的広がりを有していたのかを明らかにする点にある。まず第一節では、『後期ビザンツ版』の代表的な二つの版及び二つの簡約版を網羅的に調査し、「上方」「下方」「前方」「中間」「周囲」などの空間概念を示す副詞のうちのあるものが、問題の対格パターンを体系的に受け入れることを明らかにする。第二節では、年代上『後期ビザンツ版』に先行し、その基となった『偽カリステネスε版(7-8世紀)』及び後代の『現代ギリシャ語版(18世紀)』との対照が行われる。その結果、この二つの作品中では標準的パタンが副詞+対格名詞に対応しており、後者のパタンはビザンツ後期の現象であることが示される。第三節では、他のビザンツ後期の民衆語テキストが調査され、韻文・散文からの散発的な例が提示される。すなわち、問題のパタンは、少数派ではあるが、準標準的な位置を占めていたと考えられる。第四節では、ギリシャ語の通史内での問題のパタンの持つ意味が検討される。対格形の意味領域の拡大は、従来より指摘されており、多くの自動詞や斜格支配の前置詞が対格を支配するようになった点に明瞭に観察される。本稿で考察した、副詞の属格支配から対格支配への移行もこの通時的変遷の一端として解釈することが可能である。最後に第五節では、一般言語学的見地からの解釈が示される。副詞から前置詞への移行は、「文法化」の過程として汎言語的に見られるものである。問題のパタンは、この過程上で、ある副詞グループが前置詞へと統語上の特性を変化させる際に現れたものと考えられる。
- 1994-12-25
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