農業用水利と発電用水利の競合と共生 :梓川の水利を事例として
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概要
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発電用水利と農業用水利は,本来,競合的な性格を持っている。しかし,戦時体制に入る頃から,両者の関係は共生的なものへと変化してくる。本稿は,梓川の農業用水利を事例として,このような変化の過程を明らかにすることを目的としている。梓川扇状地の農業地帯には,近世の時代に梓川から取水する11の堰(農業用水路=水利集団)が存在していたが,明治になって新たに2つの堰(波田堰,黒川堰)が開削された。これらの地域の農業用水は渇水期にはしばしば不足状態となり,堰同士が競合的関係にあった。大正末に,農業用水の改良が国の政策として取り上げられ,11の堰の統合が行われた。梓川の水は近代的な頭首工によって一括して大量に取水され,各堰へ計画的に分水されるようになった。さらに,1943年から梓川農業用水路の改修計画が持ち上がり,頭首工を上流部に移動させ波田堰をこの水利システムに加えた。この時に,農業用水路を利用して2つの発電所が建設された。農業にとっても建設資金を捻出するためには水力発電との共存は必須であった。これ以上に水の高度利用,総合利用を進めようとするならば,上流部への巨大貯水池の建設が必要となる。戦時,戦後の上高地ダム建設計画の背後には,梓川の水をめぐる農業と発電の関係の変化があった。
- 2012-03-15
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