エクトール・マロ原作, 五来素川訳『家庭小説未だ見ぬ親』の研究
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概要
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『家なき子』の邦題で有名なフランス児童文学作品,エクトール・マロ原作Sans Famille(1878)は,五来素川が『未だ見ぬ親』の題で初めて翻訳し,明治36年に出版された.Sans Familleはどのような価値を見出され,付加されて日本に紹介されたのか.本稿ではこの問いについて,この作品が「家庭小説」とされたことを手がかりとし,また原作と翻訳の比較,他の五来の文章の読解を通して検討する.五来は道徳を含む小説で読者を教化しようとし,『未だ見ぬ親』には日本の「家庭」で基準とされるべき家族の道徳,特に親子道徳が含まれたと考えられる.原作に見出されたのは個人主義に基づく親子関係であり,親子間の情愛と子の人格形成を目指す教育が評価された.その一方で『未だ見ぬ親』には,五来が日本の家族主義の道徳の基礎と見なした,子から親への報恩の観念も付加された.五来は当時の日本の社会を家族主義から個人主義の過渡期にあると理解しており,『未だ見ぬ親』には,個人主義を基本としつつ,当時の日本の「家庭」にふさわしい親子道徳が込められたと言える.
- 2011-12-20
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