減農薬・減化学肥料農業の成立条件
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概要
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This paper analyzes empirically the factors influencillg pesticide and fertilizer use, and examines the possibility of reducing widely the application rates of such inputs, using a case study from Kyushu, western Japan. A regression procedure shows that the elasticities of production of the two inputs are approximately zero or even negative since1975, implying these inputs have been obviously overused. Consequently, it is possible to reduce widely the use of the two inputs without or with only less production or income loss.この20数年間に環境保全型農業が様々な視点から検討され, 実践されてきた. 低投入持続的農業(LISA), 代替農業(alternative agriculture), 生態農業(ecologycal farming or~agriculture), 有機農業(organic farming)などが, その代表例である. こうした検討と実践によって21世紀農業の基本的な姿が漸次明らかになり, 広範な共通認織が形成されつつある. 従来, 食料供給と環境保全はトレード・オフ関係のように捉えられてきたが, 世代を超える持続可能性(sustainability)範疇の確立によって1つの軸に統合され, これまでと違った意味の総合農政が求められるようになった. これは, こうした努力の最大の成果と言えよう. 環境保全型農業を政策理念にとどまらず, これまでの生産性中心の政策体系に永続性要素を入れ加えた農政展開の1つの基軸とするならば, ①現在の技術水準や苗場システムの中で環境保全型農薬がどれだけ実現可能なのか, ②実現可能な水準が妥当と思われる水準(一種の理論的基準値と考えてよいが)から大きく乖離した場合に, 妥当な水準の実現に向けてどのような政策手段が用悪されるべきか, どのような制度の修正あるいは設計が求められるかは, 当然考えねばならない. 本研究は, こうした内容に焦点を当て, 環境保全型農業の中核をなす減農薬・減化学肥料農業の広範な展開の可能性を九州地域を中心に検討するものである. 環境保全型農業は, 捉え方によって幾つかのパターンがあるが, 農薬, 化学肥料の多投による環境負荷の増大が農業の外部不経済を象徴する存在をなしているため, 減農薬・減化学肥料農業への取組が環境保全型農業の展開において特に重要な意味を持っていると考える. 最初に第2節では, 九州農業における減農薬・減化学肥料農業の展開実態を全国一般動向との比較で考察し, その背景を探る. 節3節では, 農薬, 肥料の施用効率の変化を計測し, 過剰投入の要因分析および経営経済的検討を行う. 第4節では, 農薬, 化学肥料削減の可能性を考察し, 政策的対応のあり方と具体策について検討する. なお, 生産費調査や物価統計等においては, 「化学肥料」でなく「肥料」の用語を使っているため, 本稿では状況に応じて両方とも使うことにする.
- 九州大学大学院農学研究院の論文
- 2000-11-00
九州大学大学院農学研究院 | 論文
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