貯繭に對する濕度及び炭酸瓦斯の影響
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概要
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既に乾燥し相當長き期間倉庫内に貯藏した繭を, 煮繭前1乃至2日の間種々の條件の下に處理して, 其實際繰絲や絲質の上に及ぼす影響を試驗したが, 今其結果を要約すれば次の樣である。1) 空氣が多くの濕氣を含んでゐない場合には, 煮繭前の半日乃至1日間, 繭を普通の室内に放置して置いた方が, 水蒸氣及び炭酸瓦斯を除去した空氣中に置くよりも宜しい。2) 空氣が特に濕潤なる場合, 又は放置が2日間以上に亙る時は, 繭は空氣の流通と斷ち密閉器中に貯へる方が安全である。3) 煮繭前一夜の室内放置に依つて, 繭が1%程度の水分を吸收した場合には良結果を與へるが, 3%以上に及ぶ時は惡い。4) 繭は外氣に接觸せしめると一夜にして既に惡影響を受ける。5) 繭貯藏瓶内に水蒸氣を通入して密閉して放置すること一晝夜に及べば其繭質は惡くなる。6) 乾燥した炭酸瓦斯中に1-2日間保存すれば, 其繭は水蒸氣中に貯へた場合よりもより大なる害を受ける。7) 繭を入れた瓶内に水蒸氣及び炭酸瓦斯を同時に通人して1乃至2日間放置すれば, 各々の瓦斯中に別々に貯藏した場合よりも, 其結果は却つて宜しい。之は此兩瓦斯が繭絲セリシンの溶解度の上に相反する作用を有するためと考へられる。8) 諸實驗の成績を通觀するに, 長き間貯藏した乾燥繭は, 煮繭前の短時日の間上述の如き諸種の處理をなすとも, 其繭質の上には特に著しい影響を蒙らない。
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