大正期における実業学校の地域経済への寄与に関する考察 : 青森県立工業学校の「工業伝習」の事例から
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概要
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学校の教育活動には、児童生徒に対する教育活動のみならず、社会人に対する教育活動も含まれる。従って実業学校の地域経済への寄与のあり方としては、実業学校の卒業生が地域産業に対してどのように貢献したのかという側面と、実業学校が地域産業を担う社会人をどのように再教育したのかという側面に分けられる。先行研究は前者の視点に立った分析が主であったが、本稿では後者の側面を分析対象とし、大正期の青森県における唯一の県立工業学校であった青森県立工業学校の「工業伝習」の実態を初めて明らかにした。 「工業伝習」は県の事業であったが、実務の一切は県立工業学校側が担当した。工業伝習が始められた背景には、当時の青森県工業が幼稚な域を脱していないとする県や工業学校の一致した見解が存在した。とりわけ工業学校側は、長期にわたる技術伝習は学校において実施し、工業伝習は年々進歩する技術に即応するための短期的な講習であると考えて、その役割を明確に区分した。また工業学校側が想定した工業伝習のもう一つ役割は、受講終了生の中から工業伝習の講師を養成することであった。この点については、その実例があったことを確認した。 工業伝習が地域経済に与えた効果は、県や工業学校が工業伝習に寄せた期待と一致した。 現存する工業伝習に関する資料は、大正6 年から昭和2 年までのものであるため、その後の工業伝習の実態を知る手がかりはない。しかし、大正11年[1922]に設立された青森県工業試験場が発行した業務報告書によれば、工業伝習事業は同試験場に引き継がれたと推測されるのである。
- 2011-12-28
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