突然変異抑制酵素NUDT5 の幅広い基質特異性発現機構
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概要
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DNA は生物にとって最も重要な遺伝情報を担う物質でありながら,塩基の酸化,メチル化,チミンダイマーの形成,鎖の切断など,様々な損傷を受けることが知られている.そのため,生物はこれらの損傷に対する多様な防御機構を備えている.DNA の塩基部位の酸化は代表的な損傷の一つであり,特に国内においては酸化損傷およびその修復機構に関する研究が精力的に進められている.DNA を構成する4 種類の塩基(アデニン,グアニン,シトシン,チミン)の中でも,グアニンは最も酸化損傷を受けやすく,その中でも最も生成され易い8-オキソグアニン(8-oxo-7,8,-dihydroguanine,8-oxoG)は,シトシンだけでなくアデニンともミス塩基対を形成してしまうため,DNA のトランスバージョン変異を引き起こす要因となる(図1)1)~3).その結果,8-oxoG はアルツハイマー病4),心疾患5),ガンなど6),多くの疾患へ関与することも報告されている.ヒトNUDT5 は元来,ADPリボースなどのADP-sugar と呼ばれる一連の修飾ヌクレオチドの加水分解酵素として同定されたが7)8),その後の研究で酸化損傷に対する防御機構としても働くことが発見された酵素である.後に詳述するが,DNA の酸化に対する防御機構としては,DNA鎖上の酸化塩基の除去だけでなく,DNA 前駆体であるヌクレオチドレベルでの防御機構も重要であり,NUDT5 は,ヒトの細胞内の酸化損傷ヌクレオチドの除去において中心的な役割を担っている酵素の一つと考えられている.また,多くの酸化損傷ヌクレオチドおよびADP-sugar を加水分解することから,幅広く細胞内の浄化に寄与している酵素ともいえる.最近われわれは,NUDT5 と酸化ヌクレオチドとの複合体の立体構造解析の結果などから,NUDT5 が酵素学的にも大変興味深い非常にユニークな機構により様々な基質を認識し,加水分解していることを明らかにした9).本稿では,その立体構造解析の結果を中心に,NUDT5 による基質認識機構および加水分解反応機構を概説したい.
- 2011-11-25
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