貝原益軒における「民生日用」に資する学問と教育論の展開(2)―『家訓』にみられる家意識と教育の問題を中心に―
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概要
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近世の日本に輩出した儒者の中で,江戸時代前期,すなわち十七世後半から十八世紀初頭にかけて活躍した貝原益軒(寛永7,1630-正徳4,1714)は,教育行為を人間に必須の営みとしてとらえた儒学者である。当時における教育言説の語られ方は,学ぶ側の心得として説かれるのが一般的であった。その中で,益軒は子どもを教え育む役割を担う大人の在り様に議論の重点を移し,教える側の視点にたって,教育の在り方に関する言説を具体的且つ多様な人々が実践可能な形で展開した。本研究は,このような貝原益軒に着目し,その教育論の特質を,学問論としての民生日用の意識との関連において考察することをとおして,近世の日本社会における子青と教育に関する課題意識と具体的な方法論を明らかにすることを目的としている。第一報(『研究集録』136号,2007年,岡山大学大学院教育学研究科)では,「格物窮理の工夫と有用の学」のサブタイトルのもとに,(1)益軒における教育論の展開の時代背景(2)太平の世に対する益軒の肯定的な受容態度(3)人々の安定した生き方に焦点化された言説の特質(4)格物窮理の工夫と有用の学を目ざす益軒の学問の概要(5)世に利益をもたらし,庶民の生活に役に立つ経験的な実学の内実などを明らかにした。第二報の本稿においては,第一報の基礎的考察を踏まえ,益軒の『家訓』を主要な考察の対象として取り上げる。『家訓』に見られる益軒の家意識の内実と教育的思考との連関を考察することにより,民生日用のための有用の学を目指した益軒教育論の特質が家の安定との関連において解明されるとともに,江戸期における家の確立と安定に資する教育言説の一端も明示しうるであろう。
- 2011-10-25
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