本論文は、「畿内における古代の朱の生産に関する考察」として、水銀朱の原料である鉱物の辰砂原石と各地の古墳出土水銀朱や遺物付着水銀朱を比較して、非破壊分析によって産地の推定を試みたもである。なお、本論文では論述に先立ち、とかく曖昧にされがちな赤色顔料の種別を明確にし、「朱」という言葉は、「水銀朱」、すなわち、「硫化水銀を主成分とし、原料を辰砂とする」と定義した。