ある言語学者のエスペラント観について
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概要
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エスペラント運動をはじめて内部からながめるときに、すぐにきがつくのは、そこにかかわっている職業的言語学者が非常にすくないことである。なぜ言語の「専門家」であるはずのひとびとがエスペラントやエスペラント運動に関心をしめさないのか。あるいはエスペラント運動の(批判ではなく)中傷すらおこなうことがあるのか。本稿ではこの点についてかんがえてみたい。そのてがかりとするのは、くろだりゅーのすけ(黒田龍之助)『にぎやかな外国語の世界』(白水社、2007 年、pp.156-7)におけるエスペラントについての記述である。これを選択した理由は、この著者が一般むけの比較的良質な書籍を商業出版している著者であることと2、エスペラントについてふれたその内容が、言語学者・言語研究者のあいだにみられる立論の典型例であると筆者が判断したことにある。本稿ではその議論がもつ特徴の析出をこころみ、なぜそのような議論がなされるのか、その背景をかんがえる。こうした作業は、エスペラント運動の障害ともなりうる言説がうみだされる構造を把握し、その対抗言説を構想するための基礎となるだろう。まず、当該の記述をしめす(下線は引用者による)。
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