Bhavya's Critique of the Vaiśeṣika Theory of Liberation in the Tarkajvālā
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概要
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『思択炎論』Tarkajvālā を構成する全11章の中で、第7章「ヴァイシェーシカ派の真実[説]の確定」に関しては、従来、比較的研究が乏しかった。その主な理由は、同論が注釈対象とする根本偈、すなわち『中観心論』Madhyamakahṛdayakārikā のサンスクリット写本が、同章のほぼ全体を収める第18フォリオ(葉)を欠いているからである。総計で29偈からなる同章の中では、最後の2偈のみは第19フォリオの第1行目に置かれるため、サンスクリット語で入手可能であるが、それ以前の27偈は、残念ながらチベット語訳のみに拠らざるを得ないのが現況である。// 『思択炎論』の第7章における著者バヴィヤの主要な意図は、初期ヴァイシェーシカ派の典籍で主張されるアートマンおよび六原理(padārtha、句義)に対する批判的な分析を通して、ヴァイシェーシカ派の解脱論を考察、批判することにあった。バヴィヤは、序説および第1偈においてヴァイシェーシカ派の解脱論を紹介し、その前主張、とくに第1偈にとりまとめた解脱論を、第2偈以降に置かれた後主張の中の第23偈から第28偈において、句(pāda)ごとに批判を加える。バヴィヤによるヴァイシェーシカ派の解脱論の紹介と批判は、初期ヴァーシェーシカ派の主要な思想を伝えるばかりでなく、ヴァイシェーシカ派の解脱論に対する当時の仏教徒による批判の一端を示している点できわめて興味深く、貴重な資料である。// バヴィヤは、ヴァイシェーシカ派の解脱論をいかに理解したのか。かれによるヴァイシェーシカ派の解脱論の紹介は、はたして『ヴァイシェーシカ・スートラ』のみに依拠したのであろうか。あるいは、プラシャスタパーダ作の『パダールタダルマサングラハ(諸原理と法の綱要)』(Padārthadharmasaṃgraha)等のヴァイシェーシカ派の他の著作の影響があったのであろうか。さらにまた、かれは議論に際して、意図して仏教の教理を援用し、結果としてヴァイシェーシカ学説を歪曲するようなことはなかったと言えるであろうか。// 本論文では、とくにバヴィヤに伝えられたヴァイシェーシカ学説の典拠を探り、かれの批判の内容に分析を加えながら、以上のような関連する複数の問いに対する基礎的な回答を提示したい。
- 2011-03-31
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