日本語教育における聴解指導に関する研究 : ニュース聴解の指導のための言語知識と認知能力
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概要
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本研究では、ニュース聴解の指導のために必要な「言語知識」と「認知能力」について明らかにした。まず、「言語知識」では1.談話構造、2.文・表現、3.語彙の三つの観点から分析を行った。ニュースの1.談話構造では、先行研究で言及されている談話構造を比較し、基本的な談話構造が「リード文+背景+詳細+展望・付加」であることを示した。さらに談話構造の違いが理解に影響を与えるかどうかテストを行った結果、超級クラスも上級クラスも平均値に差はないものの、いずれも標準偏差の値が大きく相関の仕方が両クラスで異なった。よって談話構造の差が原因であるというよりも個人差が問題であることを指摘した。2.文・表現では、『日本語能力試験出題基準』(2002)(以下『日能試』)の機能語のリストとニュース文に用いられる表現を比較した。ニュース文の複合助詞のいくつかは『日能試』のリストと一致したが、それ以外は一致するものが少ないことから、文・表現が聴解の難しさの原因であるとは考えにくい。その他、ニュースの談話構造と表現の関係、連語表現についても見た。3.語彙では、ニュース語彙の難易度を見た。ニュース語彙のうち約4分の1が『日能試』にない語でニュースの理解には級外に相当する語の指導が必要であることが分かった。級外語の意味分野を『分類語彙表』(2004)と対照した結果、特に【16 時間】【17 時間】【24 成員】【15 作用】の分野の語の指導が必要であることがわかった。さらに語彙力と理解の関係を見たところ、学部1年生の留学生では両テストの間に中程度の相関があった。テストの得点の類似者をタイプ別にまとめた結果、語彙力が高くても理解できないタイプがおり、語彙は重要であるが聴解の難しさの原因は語彙だけではないことがわかった。次に、「認知能力」では「事前情報」の影響と「予測能力」について見た。「事前情報」を利用させるため学習者に継続的な学習リソースの利用を促した結果、言語知識を多く持たない学習者の聴解に変化が見られた。また、「予測能力」と語彙力や理解との関係では、語彙力も予測能力も理解に影響を与えているが、予測能力より語彙力の方が影響が大きいことがわかった。テストの得点の類似者をタイプ別にまとめた結果、語彙力や理解が同等であっても予測能力に差が見られた。特に予測するタイプは、十分な語彙力を持っていることがわかった。これら一連の研究の結果から、日本語教育への応用について述べた。
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